家族信託で「できないこと」の残酷な現実。身上保護の限界を知らずに後悔する前に

はじめに|家族信託を契約する前に、必ず知っておくべきこと

「家族信託を組めば、親の老後は全部任せられる」

そう思い込んでいた時期が、私にもありました。信託契約の準備を進めながら、正直なところ、それで万全だと安心していました。

しかし、契約を結ぶ前に念のためと思って制度の細部を調べていくうちに、大きな壁にぶち当たりました。

家族信託では、介護施設の入所契約・病院の入院手続き・要介護認定の申請といった、いわゆる「身上監護」の権限が一切ないのです。

つまり、いざ親が倒れた時、信託口座からお金を払うことはできても、施設との入所契約を子が代理で結ぶ法的な権限はないのです。

加えて、農地・年金受給権・銀行口座そのものなど、そもそも信託の枠組みに組み込めない財産が存在することも、このリサーチで初めて知りました。

この記事では、これらの「家族信託ではできないこと」の実態を具体的に解説します。そして、身上監護の弱点を補う「任意後見制度との併用」という対策についても、あわせてお伝えします。

家族信託は万能ではない!

この事実を事前に知っているかどうかが、いざというときに家族を守れるかどうかの分かれ目になります

この記事を最後まで読むことで、家族信託の「穴」とその埋め方が具体的に解るように書きました。契約の前に、ぜひ一読してください。

家族信託の最大の限界!「身上監護」ができない残酷な現実

事実として知っておいて欲しいのですが・・・家族信託は、決して万能の魔法ではありません。

「家族信託さえ組んでおけば、親が認知症になっても全て安心だ!」
もしあなたがそう思い込んでいるなら、

今すぐその認識を改めてください!!!

結論から言うと、家族信託には決定的な弱点があります。

それは、親の身の回りの手続きを代行する「身上監護」ができないという事実です。

これ、私が実家を守るために必死で調べていた時、見つけた事でした。

身上監護権とは、認知症などで判断能力が低下した方の生活や身体の安全を守るために、介護サービスの契約や病院での手続き、施設への入所などを代わりに行う法的な権限です。

お金は払えても「介護施設の入所契約」は結べない

家族信託というのは、あくまで「親の財産(お金や不動産)を管理・運用・処分するため」の契約です。
つまり、財産管理の権限しか与えられません。

もし私があの時、この事実を知らずに見切り発車で信託契約を済ませ、いざ父が倒れて介護施設へ入所させようとしていたら・・・

間違いなく、施設の担当者から冷酷にこう突き返されていたはずです。

「家族信託の契約書だけでは、お父様の代理として入居契約は結べませんよ」

えっ???
ちょっと待ってください!!!

私は父の財産を管理する「受託者」です。施設の入居費用だって、私が管理している信託専用口座から全額支払うことができます。
お金は払えるのに、

肝心の「入居契約」を親の代わりに結ぶ法的権限がない

だなんて・・・

調べれば調べるほど、恐ろしくて頭が真っ白になりました。

施設の契約という法律行為は「身上監護」にあたるため、いくら財産の管理者であっても代行できないのです。

お金はあるのに施設に入れない。この残酷な現実を知らずに契約を進めていたらと思うと、今でも背筋が凍ります。見つけてホント良かったです(^o^)

病院の入院手続きや要介護認定の申請も対象外

身上監護ができないことによる弊害は、施設入所だけにとどまりません。

親の介護が本格化していく中で、以下のような手続きもすべて「家族信託の受託者」という立場だけでは代行できないのです。

  • 病院への入院手続き
  • 手術の同意書へのサイン
  • 要介護認定の申請や更新手続き
  • 介護サービス事業者との契約

「お金の管理ができれば、あとは何とかなるだろう」という甘い見通しは、完全に打ち砕かれました。

いざ親が倒れ、怒涛のように押し寄せる手続きの山を前にして、家族信託だけでは全く無力になる瞬間が必ず来ます。

家族信託は、お金を凍結から守る最強の盾にはなりますが、親の身体や生活を守る手続き(身上監護)に関しては完全に無力でした。

この事実を知らないまま契約してしまうと、いざという時に取り返しのつかない後悔をすることになります。絶対に覚えておいてください。

認知症による資産凍結から親を守る|家族信託のおやとこ

身上監護だけじゃない!家族信託に組み込めない「3つの財産」

「身上監護ができない」という事実だけでも十分に恐ろしいのですが、私が法務省の資料や専門書をさらに読み込んでいくと、さらなる落とし穴が待ち受けていました。

実は、親の財産であれば「何でもかんでも信託できる」わけではないのです。
法律上、どうしても「家族信託には組み込めない財産」が存在します。

これを知らずに「全部まとめて信託するから大丈夫」とタカをくくっていると、いざという時に手続きが完全にストップしてしまいます。代表的な3つの例外について、調べた結果をシェアしますね。

①そのままでは信託できない「農地」の壁

まず、地方の親御さんをお持ちの方にとって最大の壁になるのが「農地」です。

「実家の横に少しだけ畑がある」
「昔は農業をやっていた名残で、地目が農地になっている土地がある」

こういった土地は、そのままでは信託財産に入れることができません。
農地法の厳しい制限があるため、信託するためには「農地転用」という別の許可手続きをわざわざ踏まなければならないのです。

幸い私の実家は住宅地でしたが、もし畑があったら・・・

「実家の土地建物を全部信託した!」と思い込んでいても、一部が農地だったばかりに後からトラブルになるケースが後を絶たないそうです。

②「年金受給権」などの本人固有の権利(一身専属権)

次に勘違いしやすいのが、親の生活費の命綱である「年金」です。

「親の年金が入ってくる権利ごと、私(子)に信託して管理させよう」
そう考える方は多いのですが、これは法律上、不可能です。

年金を受け取る権利や生活保護を受ける権利は、法律で「本人だけのもの(一身専属権)」と厳格に定められています。そのため、契約によって他人に移すことはできないのです。

ではどうすればいいのか?

結論としては、「年金が親の口座に振り込まれた後、その現金を、受託者である私が管理する信託専用口座へ移動させる」という実務上の工夫が必要になります。

権利そのものは信託できないため、こういった泥臭い運用ルールを事前に決めておく必要があります。

③「預金口座(預金債権)」そのものと借金

これ、一番多くの人が勘違いしているポイントです。

「面倒だから、親の使っている銀行の通帳(口座)ごと、丸っと信託すればいいんでしょ?」

残念ながら、これもできません。銀行の預金には「譲渡禁止特約」というルールが設定されており、親名義の口座という「ハコ」そのものを子どもの管理下に移すことは実務上不可能なのです。

だからこそ、わざわざ新しく「信託口口座」という専用のハコを作り、そこに親の口座から「現金(中身)」を移す必要があるんです。

さらに付け加えると、親の「借金(債務)」も信託できません。 借金は財産ではなく「マイナスの義務」だからです。もし親に住宅ローンやその他の借入がある場合は、家族信託とは別のアプローチで対策を講じる必要があります。

認知症による資産凍結から親を守る|家族信託のおやとこ

「身上監護ができない」致命的弱点をカバーする唯一の防衛策

「家族信託だけでは、親の介護施設にも入れられないし、入院の手続きもできない」

これでは親のお金は守れても、肝心な親の身の回りの世話(法律行為)が出来ません。

さあ、どうしようかと続けて調べていくうちに、この致命的な弱点を完璧にカバーする「唯一の防衛策」を見つけました。

「任意後見制度」との併用で親の尊厳を守り抜く

その解決策とは、

「任意後見契約」を家族信託とセットで結んでおくこと

です。

任意後見制度とは、親がまだ元気で意思能力があるうちに、「将来、自分の判断能力が落ちたときは、あなたに身の回りの手続き(身上監護)をお願いするね」とあらかじめ決めておく制度です。

【家族信託】お金の管理(財産管理)に特化した強力なエンジン
【任意後見】施設入所や病院の手続き(身上監護)をカバーする強固な盾

この2つは、言わば親の老後を守り抜くための「車の両輪」なのです。

私は、父がまだ元気で話ができるうちに、家族信託の契約と同時にこの「任意後見契約」も結びました。

これによって、「お金の管理は家族信託でスムーズに行い、いざ介護が必要になった時の契約等の手続きは任意後見人として私が代行する」という、隙のない防衛ラインを構築することができたのです。

※注意してほしいのは、任意後見も「親に意思能力があるうち」しか契約できないという点です。認知症が進行してからでは手遅れになります。つまり、家族信託を検討するタイミングで、セットで準備を進める必要があります。

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まとめ

家族信託は万能ではない。現場で多発する「トラブル」と契約前に絶対知るべき防衛策

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

「身上監護ができない」という家族信託の限界は、任意後見契約との併用というアプローチで、事前にクリアすることができます。

また、農地・年金受給権・預金口座そのものといった「信託できない財産」についても、代替手段や実務上の工夫で対応できる道があることも、おわかりいただけたかと思います。

しかし、一番正直な話を、経験者として、ここに記します。それは・・・

家族信託の現場に潜む危険は、「身上監護の問題」や「信託できない財産」だけにとどまりません。実際に制度の利用が広がる中で、事前に知っていれば絶対に防げたはずの、別の致命的なトラブルが多発しているます。

  • 良かれと思ってやったのに、兄弟から「財産狙い」と疑われてしまう
  • 契約の設計ミスで、予期せぬ多額の税金が課される
  • 法律上の細かいルールを見落とし、契約が強制的に終了してしまう

これらは、いくら本人が真面目に取り組んでも、知識なしには個人の努力だけでは避けきれないトラブルです。

家族信託の契約書に実印を押す「その前」に、こうした現場で起きているトラブルの全体像と、共通して使える防衛策を必ず把握しておく必要があります。

私が実際に調べ、体験を経て学んだ「後悔する人のパターン」と「その対策」については、以下の記事にまとめています。こちらも合わせてお読み下さい。

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会社概要
商標名 おやとこ
会社名 こころのカンパニー株式会社
(旧トリニティ・テクノロジー株式会社)
資本金 18億2988万円
グループ企業 ■司法書⼠法⼈トリニティグループ
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